パイロットフィッシュ

  • 投稿:
  • 更新:2014年6月10日
  • by
  • in

パイロットフィッシュ 著:大崎善生

僕が本を買うときってインスピレーション。
なので、だいたい平積みされているのばっかり買っている。
まんまと本屋にやられている感がしないでもないが、ぼけーっと眺めていると、なんとなく本の方から僕を呼んでいて、そんなときにあまり考えず、手にとってそのまま買った本って意外とヒットだったりする。
電車の中吊りとか見て『あっ読んでみようかなぁ』って思っても、3秒後には忘れている鶏頭だから、こういった本の選び方って僕にとっては一番ベストな方法なのかも知れない。
そもそも人生だって、ぼけーっと歩いていて、呼ばれた方に行っているみたいなもんだし。

本って、その年齢にあった本、というか、その年齢だから共感できる本ってあると思う。
僕の場合、若かりし頃は、片岡義男であったり大藪晴彦であったり、すこし時間が経って村上春樹であったりした訳だ。
このパイロットフィッシュ、読むならもう10ばかり若かったら良かったな。
でも、この文体は好きだし、前回読んだ「ハードボイルド・エッグ」が会話を楽しむ本なら、この本は会話より心の動きをリアルに捉えてて、少し悲しくなったり、少し辛くなったりする。
この「少し」ってのが、「激しく」より以外と心に残る。
そういった意味では、今の年の僕が読んだのは、ある意味で心にヒットしたのかなぁ?

『人間は記憶の集合体で、出会ってしまったら2度と別れることは出来ない』
これは、この本からの引用だけど、たしかにそうだね。
もちろんメタフォリックにだけど、ぼくの脳味噌のなかにも、連綿と過去の記憶は横たわり、多かれ少なかれ、これから先僕が生きている限り影響を与え続ける。
自分自身、気が付こうと、気が付くまいとだ。
逆に、僕が生きていようが、死んでしまおうが、僕と出会った人の心に僕は生き続けてしまう。
少し大変なことのような、少しホッとするような。

僕は誰かのパイロットフィッシュになっているのだろうか・・・

って思った1冊でした。