ミントの香りと、白い肌と

たぶん、標準的な部屋の温度からすると、ここは少し汗ばむくらいだ。
目をつぶると南国をイメージできる程度に。
彼女が入ってきたと同時に、部屋の中にミントの香りが広がる。
南国の雰囲気にはふさわしくなく、色白で透き通るような肌をしている。

僕だってたまには息抜きのため、こういった所に来る。
その彼女は始めて見る顔。
駅に近くて、良い店なんだけど、指名が出来ないのが難点。
でも、どうやら今日は当たりだったみたいだ。

彼女は必死に上下運動を繰り返す。
白い肌に玉の汗が浮かんでくる。
仕事とはいえ、なんだか気の毒になってくる。
僕はといえば、やはり滝のような汗をかいているけど、それほど気持ちいいわけでもなく、仕方なしに少し困った笑顔を張り付かせている。

<もういいよ、それくらいで>

何度か言おうかと思ったけど、それは彼女のプロ意識を傷つけてしまいそうで、喉まで出かかった言葉を飲み込む。

また、ミントの匂いがきつく香る。
必死に上下運動を繰り返す彼女の顔も、苦痛でゆがんでいる。
僕は、もうこの部屋を出たくなった・・・
ミントの匂いがいけないのかもしれない。
いや、この暑すぎる部屋のせいか・・・
さすがに彼女のプロ意識も限界らしく、しきりに時計を気にしている。

できれば、こんな制約された時間でなく、もっと別の場所で会えたらと、ふと思ってしまう。
ショートカットの後れ毛を伝う汗がキラキラと綺麗だ。
見とれている僕に気が付いた彼女が微笑みを返してくれた。
それでもう十分だよ。
強いミントの香りに頭がクラクラしてきた。

彼女はゆっくり動作を止め、申し訳なさそうに目を伏せ

「終わりです・・ありがとうございました」

っと

どうやら時間がきてしまったらしい。
僕は気怠げに腰を上げ、扉をあけて部屋を出てシャワーをあびる。
そして、そのまま水風呂へ・・

<さすがに20分近くもサウナに入ると体が茹だる>


ってことで、土曜日の昼下がり、ジムのサウナの風景である。
そこのサウナはユニセックス(もちろん水着着用)で、毎度きまった時間に、ミントを霧吹きで噴霧してくれる。
噴霧したミントをバスタオルを激しく上下させて攪拌してくれるわけだ。
はたで見ていると申し訳ないくらい大変な作業なんだよね。