片想い

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  • 更新:2014年6月10日
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片想い 著:東野圭吾

この人の本はこれで2冊目。
最初に読んだ「どちらかが彼女を殺した」では、推理小説嫌いもあって、自分の中での評価はあまり高くなかった。
でも、僕は完全に勘違いしてた
後書きの解説でも書いてあったけど、この作家、ジャンルにとらわれない幅広い物語をたくさん紡ぎ出している。
広末が主演した映画「秘密」も、この人の原作。(気が付かなかった・・)
「どちらかが彼女を殺した」は、その幅広いジャンルの片鱗に過ぎなかったんだ。
この本読んでなかったら、危うく見過ごすとこだったよ。

ってことで、今回はやられた。
読み終わった後、というか後半の数ページで鳥肌が立ってた。
登場人物はそれほど多くないんだけど、心の揺らぎまで克明に描写されているから、物語の幅というか厚みというかが凄い。
600ページ以上あるけど、一気に読破(ページを繰る手ももどかしく)できる。
とくに美月の心の揺らぎ、迷い、想い・・・ こんなに繊細に人の心を文章に出来るのかと・・・
しかも、直接的な表現でなく、読み手にその心の揺らぎがちゃんと伝わってくる。
ちなみに、美月は容姿は女なんだけど心が男という、性同一性障害を持つ女性(?)。

「片想い」ってタイトルが何故ついているかは書かないでおくけど、いろいろな片想いがこの小説にはちりばめられている。

片想いか・・・
本当の片想いってのは物語にならないし、現実においてもそれほど気持ちが切なくなることは無いと思う。(少なくとも僕の場合は)
心が相手にも伝わっているけど、どうしようもなかったり、お互いに片想いをしているのに到達点が見つからなかったりするから辛く悲しくなる。
言葉で伝えられない思いは、言葉以上に相手に届いてしまう。
気が付かない素振りも思いやりだったりする。
そんな片想いは切ないね。

って思った1冊でした。