夜の静寂に[fict.]

さて今宵満月
暗闇に潜んでいた狼達も森を抜け出し街へと繰り出す。
一夜の夢や温もりを求めて。

僕も心も踊らせ地下鉄の階段を駆け上がる。
月明かりの下、置き忘れてきた心を探しに。

高架橋の下、あいにくと月は見えないけど、少しだけ冷たくなった中秋の風が気持ちいい。
逸る僕の気持ちを少しだけ落ち着かせてくれる。
待ち合わせた場所には懐かしい笑顔。
進むのを止めていた時間がいきなり音をたてて流れ出す。
まるで、ビデオの一時停止から再生を押したように、止まっていた時の音と光をそのままにして。

時折見せる、少しだけ悲しそうな顔。
僕の止まった時計の外で、どこか遠くまで旅をしてきた?
心配しなくてもいい。
終わらない旅はないし、終わらない旅ならそれは人生そのものだし、人生にだっていつかは終わりが来る。
それに、いつだって必要なら僕はここにいる。
そして、綺麗なアゴのラインを見つめ、心臓をドキドキさせる。

今日は少しだけ良い夢が見れそうな気がして眠りにつく。
静かに、そっと目を閉じる。
何もない闇に真円の赤い月が浮かび、ずっと僕を見守る。
僕は祈り続ける。
自分のために、大切な人のために。
狼達も眠りにつく。
暖かな柔肌に抱かれ、あるいは一人静かに。


と、ちょっとメタフォリカルです。
しかもオチは無し。
たまにはこんなストーリーも良いかなぁと・・・

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