海を抱く BAD KIDS

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  • 更新:2014年6月10日
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海を抱く BAD KIDS 著:村山由佳

僕自身サーファーでありながら、サーファーが出てくる物語を読んだのは始めてかもしれない。
南房総の高校でサーフィン部のある唯一の高校に通う光秀。
実家のある湘南を離れ、高校近くにあるサーフショップの2階に下宿し・・
とくれば、ほとんどのサーファーなら、鴨川第一高とノンキーを思い浮かべるんじゃないかな。
物語でそういった実名は出てこないけどね。

こんな風に書くと、サーフィンをバックグラウンドにした青春小説?
みたいに思うかもしれないけど、内容は結構ハード。
人間の持つ根源的な欲望(歪み?)とか、心と体のアンバランスとか、ハードになりがちな内容を、わかりやすいサラっとしたクールな文体で語りかけてくる。
ものすごく共感できる部分がある。
物語としても面白いし、サスペンス物とはまた違った意味で、読み始めたらとまらなくなる。
女性を海に例えた表現があって、これがクラクラするほど良い表現なんだなぁ。
たぶん、それが題名になったんだと思う。

僕は、男女間のことに関して、どちらかといえば(というかかなり?)リベラルな(常識とはずれた?)ところがあって、あまり禁忌といったものがない。
(こんな風に書くと変態プレー好きみたいだけど、残念ながらそういった話じゃない)
だからといって、常識を尺度にした罪悪感(?)がまるっきり無いわけでもなく、大人になったからって心と行動のバランスがとれてきたとは到底言い難い。
なんせ、小学校の頃から「情緒不安定」って通信欄に書かれていたくらいだ。むしろ、加齢にともない、そのギャップがより大きくなってきたような気もするし。
社会の一員を無難に演じていたって、やっぱり、心の中は混沌とドロドロしている部分もいっぱいあって、自分以外には見せられないし、自分だってたまには見ないふりをしちゃったりする。
でも、光秀がこの小説で言ったように、どれも自分を構成するパーソナリティーだから、受け入れなくてはダメなのだ。
もちろん、僕は自分のそういった全てを受け入れている。
だからといって、どうなのだ といった答えは無いのだが。

なので、だるちゃん
「あんたは、人間としてダメ」などと言わないでほしい。
正確には、「あんたは、人間としてダメな部分もある」だ。

って思った1冊でした。
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