ウサギの話

記憶をさかのぼること数十年。
それは、たしかピーちゃんの命日から10ヶ月と少し過ぎた頃の話だと思う。
まぁ なんのことはない、次の年の縁日のことだな。

今度はウサギの「ピョン吉君」を買って帰ってきた。
相変わらずのボキャブラリの少なさはさておいて、ピョン吉君は、真っ白で赤い目をしたちっちゃな子ウサギで、子供心にも「これなら食われないだろう」と思ったかどうかもさておいてだ。
丁度良い具合に、ウサギ小屋も裏にあるし(その昔は鶏小屋だった・・)、今度は以外とすんなり飼うことを許してもらえた。
またも、毎朝近くの土手から、葛(かずら)を数本抜いてきては餌をやるのが僕の日課になった。
夏休みに家族で田舎の祖父母の所へ数日帰ることになり、そうなるとピョン吉の面倒が見られなくなるので、近くのウサギ牧場に預けることになった。
そもそも、何故ウサギ牧場があるのか今となっては凄く謎なんだけど、僕の記憶ではそうなってるから仕方ない。

田舎で楽しい夏休みを過ごして帰ってきて、預けてあるピョン吉を取りに行く時

「どうせだから、つがいで貰っておいで」

と、親父が言うので、雄と雌の2羽のウサギを貰い受けてきた。
もっとも、そのうちの1羽が、本当にピョン吉だったかどうかは定かではないけどね。
あいつらは、みんな同じ顔してやがるし。
そんなこんなで、一人っきりでさみしかったピョン吉にも、めでたく彼女ができたわけだ。
やがて、似たような子ウサギがたくさん生まれる。
これがまた超かわいいのだ。数匹なら・・・。

ウサギってのは発情期が無い。
発情期が無いというか、人間と同じで年がら年中発情してるわけだ。
人間と違うのは、親兄弟姉妹構わず Fuck しまくるもんだから、あっというまにすげー数になってくる。
そうなると、もう可愛いとか、可愛くないとかの話じゃなくなる。
欲しい人には、子ウサギをあげていたと思うけど、それでも彼等の、とても意欲的な生産活動には追いつかなかったと思う。

親父の転勤でそこの家は引っ越すことになり、たぶんウサギ達は、ウサギ牧場に帰ったのじゃないかと思うけど、イマイチ記憶にないのだ。
そもそも、ウサギ牧場って何のためにあったのだろうか?
(やっぱり食われたか・・?)