湿気を嫌うゴールデンボール

動物行動学の見地からいって、ヒトというのは群を形成し行動するものである。
群れるからには情報伝達もある意味で無意識下に生ずるわけである。
この無意識に伝達する能力を顕著に観察できるのは、「じょしこーせい」なる属性で、100匹目のサルと同じく、あの奇態なる「ガングロ」を日本全国ほぼ時を同じくして伝播させたのは、他ならぬこの無意識の情報伝達である。
ちなみに100匹目のサルというのを簡単に説明すると、同じ意識をもったサルがある一定数を越えると、5感による伝達能力を超越し、集合体としての意識が他のサルへ伝播する現象を、100匹目のサルとして表現している。
前置きが長くなったが、今回のヒト観察で登場してもらうのは「じょしこーせい」属に続いて奇異な行動をする「おやぢ」属である。
目撃場所:都内の某スポーツジムロッカールーム
「おやぢ」たるものロッカールームは当然裸で何も身につけないのがあたりまえである。
すでに数人の「おやぢ」が鏡の前で、それぞれの最重大事項に取り組んでいる。
毛の生えた櫛で頭を連打する者、スダレ髪を前頭部に合わせて均一に配置する者、鼻毛を一本一本抜いて綺麗に並べている者といった具合だ。
ところが、その中の1人の「おやぢ」がドライヤーを右手に持ち、おもむろに下腹部に送風し始めたのである。
もう少し具体的に状況を説明すると、それはもう上から下から斜めから、つまみ上げてシワの寄ったところまで、まんべんなく乾燥処理を施し始めたのである。
するとどうだろう、それぞれの重大事項に取り組んでいたはずの「おやぢ」達が何を合図にするわけでもなく、ほぼ同時に同じ行為を始めるのである。
これははたで見ていてかなり面白い光景だ。
そう、ここでも無意識による情報伝達が働いたのだ。
むろん、私の右手にもドライヤーがあり、心地よい温風を我が愚息に送風していたのは、言うまでもないことである。

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