白夜行

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  • 更新:2014年6月10日
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白夜行 著:東野圭吾

正直な感想は、「あー またこれで人生の楽しみが1つ減った・・」かな。
僕は本当に面白い本を読むと、すごい満足感と当時に、同じくらいの喪失感も味わう。
たぶん、本好きの人ならこの感覚って分かるんじゃないかな?
それくらい、この本は面白かった。
そして、持ち歩くのは重かった(笑)
なんせ、上下巻にしたほうがいいんじゃないかってくらい厚い860ページだから。

そもそも時代背景が、自分の年代をかなりオーバーラップしているから、時々に挟まれるその時代の時事なんかは、「おーそいえば、こんなだった うんうん」とかうなずけるところも沢山あった。
それにしても、この物語の広がり方は凄い。
その1つ1つが緻密に結びついているから、なんども「あれ?」って前のページを繰って調べてみたりした。
最近とくに物忘れの激しい僕は、800ページ以上もあるミステリーなんて読んだら、あっちこっち気になって仕方ない。
もっともそんな些細なことは気にしなくても十分楽しめるけど、やっぱり面白い本はこだわって読みたい。
(斜め読みなんて、もってのほかで御座る)

ここから先は、これから読もうと思っている人は読まない方が良いかもしれない。

物語は、1973年に起こった質屋の主人殺人事件に端を発している。
その後の20年、いろいろな人の人生を描きながら、1人の刑事が犯人を追っていくストーリーとなる。
最後100ページ位になって気が付いたんだけど、この本、犯人の視点から見た感情の記述がほとんどない。
かなり最後の方で、一方的な会話として自分の感情を語っている部分があるけど、それにしたってほんの数行だけしかない。
しかも、ハゼの方だけで、エビのはない。(読んだ人にはわかる)
普通の本なら、善であれ悪であれ、正しいとか邪悪だとかは別にして、双方の言い分があるから、読み手も感情移入しやすくなる。
(邪悪だからって感情移入できないことはない)
この本は、一方からのストーリーしか展開しないわけだから、犯人側への感情移入がし辛くなるはずなんだけど、そこが不思議なんだなぁ。
まったく説明がないのに、最後に、いろんな悲しみや辛さがヒシヒシと伝わってきて、すごく切なくなる。

白夜じゃない、本当の太陽を見る人生の選択は無かったのか・・・

って思った1冊でした。