報復

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  • 更新:2014年6月10日
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報復 著:ジリアン・ホフマン

トマス・ハリスの、レクター博士が出てくる「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」そして「ハンニバル」を読んだときに近い衝撃というか、しかもこの小説は女性が書いている。
もっともこの作家、DV専門の元検事補だったそうだから、暴力のリアリティーは実際に基づいてるのかもしれない。
実際の暴力シーンはほとんど無いんだけど、そういった種類の怖さじゃなくて、そこまでの結果を予想させる部分に怖さがあると思う。
もっとも、怖いのはそれだけじゃないけど、あんまり書いちゃうとネタバレになるからやめておく。

検事を目指しロースクールで勉強する、若く美しいクローイ。
ある夜、道化師のマスクをかぶった暴漢にレイプされ、体中を切り刻まれ半死の状態で助け出される。
そして12年後、名前も変え、住む土地も変え、検事としてキャリアを積んだ彼女の前に、偶然から逮捕された、ブロンド美人の心臓を生きたまま抉る連続殺人鬼キューピッド。
法廷でその声を聞いたとき12年前のあの夜の記憶が・・・

僕は、流血シーンの多い映画とか(キル・ビルは超最低)、スプラッター系の映画はダメなんだけど、何故か小説でイマジネーションの中だと、かなり残虐なシーンでも以外に冷静でいられる。
フィクションだからってのもあるけどね。
こういったサイコパスの物語も、犯人に対する嫌悪感はもちろんあるんだけど、顔を覆った手の隙間から見てしまいたくなるような、どことなく自分の邪悪な部分が共鳴してしまうのは否定できない。
たぶん、多かれ少なかれそういった邪悪な部分があるからこそ、こういった小説がベストセラーになったりするんじゃないかな。じゃなきゃ誰も読まないしね。
もっとも、僕の場合極端に流血(実際の)に弱いから、サイコパスになるのは難しい。たぶん。

ずいぶん昔に読んだ本で、森村誠一さんの「悪魔の飽食」を思い出した。
(実は最後まで読み切れなかった・・・怖くて・・・)
これはフィクションでなく、日本陸軍731部隊がハルピンでおこなった悪魔のような所行の実話を書いた本。
こちらの方がはるかにおぞましい。僕はマジで一生大学病院に行くのはやめようって思ったからね。
反社会性人格障害ってのも、時代背景によってそのまま偉い医者になったり、犯罪者になってしまったりするわけだ。
言葉通りで「反社会性」だから、基盤が狂っていれば狂人の尺度も違うってことか。
だいぶ話はそれちゃったけど、人間の考える常識のボーダーラインっていい加減だぞ。

って思った1冊でした。
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