記憶の彼方にあるのは…

その目的地には何度も行ったことがあるんだけど、どうにも道が見つからない。
ここは山の中の開けた小高い場所で、見印といえば左手にある高架橋の高速道路だけだ。
たしか、この高架橋の下をくぐって向こう側に行けば良いはずなんだけど…

なんのことはない、車を止めて振り向いたら、気が付かずに通り過ぎた所に、高架橋の方へ下っていく砂利道が1本あったのだ。
引き返して高架橋の下を抜けると、いつもの守衛さんが手を振ってくれた。
いつも不思議に思うのだけど、何故この町の入り口には守衛さんがいるのだろう?

車で数分も走ると、そこはもう海のすぐ近くで、少しだけ栄えた懐かしい町並みが見えてくる。

小高い丘の上に建つ、古くて横に長い平屋の白い建物。
そもそも何の目的で建てられたのか分からないのだけど、(-- それを言うなら誰の所有かもわからない --) 学校のような雰囲気で、それこそ学食のような場所で食事ができて酒がのめるようになっている。
最大の利点は、眼下に広がる海が一望できることだ。
もう夕暮れに近い時間なのだけど、ビーチでは波が炸裂している。
喜々としたサーファー達が、次から次にくるうねりに上手くタイミングを合わせてテイクオフしていく。
低気圧が良い位置にあって、夕方で風もなく、パーフェクトな波を運んでくれている。
僕はといえば、そんな風景を少し気落ちした気分で、ぼんやりと眺めている。
今日の目的は波乗りじゃなくって、ある女性と会うためだ。
あきらめ気分で、大きく開けたガラスの開き戸を閉めて建物の中に引き返す。

波乗りのことは頭から追い出して、気乗りのしない気分で、少しぬるくなったビールの飲み干す。
そもそも何故ここに来たのだ…
波乗りもしないのに?

学食の素っ気ないテーブル(-- 学食ではないけど --)で、味も素っ気もなビールを飲んでいて、い加減帰ろうかと思ってたところで彼女が現れた。
彼女達と言い換えた方がいい。
今日会う予定の女性と、そのお供達2名だ。
彼女はと言えば、おそろしく節約された白いヒラヒラのミニスカートで、そんな格好で僕の右隣に座られると、ひどく落ち着かない。
そもそも、女性に右側に座られると、それでなくたって落ち着かないのだ。
お供の女性達は彼女の後輩で、僕と彼女のことなんてそっちのけで既に自分たちの話でガヤガヤとうるさく話し込んでる。

彼女とはたいして話すこともなく、周りのうるさい雑音が(-- お供の彼女達を含めた --)丁度良いBGMで、これで静かだったりすると、それこそウンザリしてしまうのだが、時間だけは同じペースで流れて、いつのまにか日もとっぷりと暮れてしまった。

唐突に彼女が僕の右腿に手を置いたから、すこしだけ驚いて振り向くと、遠慮がちな笑顔と諦めたような瞳のせいで少しだけ切なくなる。
おもわず顔を寄せて唇を合わせた僕は自分でも凄く驚いた。
彼女は当然のように薄く目を閉じ、そして当然のように受け入れている。
やれやれ…

ビーチに行きたいと言うので、お供の2人は置き去りにして歩いて建物を出る。
町の灯りにほんの少しライトアップされたビーチ。
もうサーファー達もいなくて、白い珊瑚を砕いたような砂浜とブルーの海が幻想的で美しい。
彼女は素足になって、ゆっくりと海に入っていく。
水にぬれて張り付いた洋服が透き通って、彼女の身体のラインをさらけだす。
僕は、白い衣を羽織った人魚じゃないかと思ったけど口に出さずにいた。

ってとこで、オシッコいきたくなって目が覚めたのだ。
どうゆう夢判断になるんだろ これって…