働かざる者食い意地だけは一人前

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  • 更新:2014年6月10日
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部屋中さがしたって12円しかなかった時代の話
そもそもその12円だって1円玉とか5円玉しかなくて、そのままじゃ電話すら掛けられないのだ
俺の田舎まで公衆電話で10円3秒とかいう空恐ろしい時代だ
3秒で今置かれている状況を誰かに伝えることを想像してみてほしい

「やぁオヤジ元気? バイトはしてるんだけどだいたい3日で全部使っちゃっうもんだからもう全然金が無くてさぁ ここ2週間タマネギしか食ってなくてもうそのタマネギも無いのよ バイト行くにもバイクに入れるガソリン代がなくて途方に暮れてるわけ だもんでできたらで良いんだけどお金送ってくれない? いやいや 家もビンボで金ないの知ってっからとりあえず月末までの米代だけでいいのよ 来月からは心入れ替えて計画的に生きていくからさ ごめんね」

なんて言った日には

「やぁオヤジ元気? バイトは」 あたりで プー・プー・プー

オヤジにしたって、「元気? バイトは」なんて聞かれても
『俺はおまえと違ってバイトじゃなくてちゃんと社会に貢献する仕事してんだ!』と憤るに決まってる
正確に伝えることが正しく伝わることではないのだ
要件は簡潔に短くが鉄則

「金無い 死ぬ 送金1万で!」

と、かなり短縮した状況説明になるわけだ
しかも途中で噛んだら死活問題に関わってくるので何度も噛まないように反復練習してから事に挑まなくてはならない
それに相手のリプライが期待できるほどの時間はないので、実際に金が送られてくるかは一か八かの大博打
よしんばリプライがあったとしても「嫌だ!」とか言われちゃったら明日への希望の火が消えてしまうので、なまじ返事など聞かない方が明日への希望がつながる

とまぁ ここまでは前置きで、そんな時代の話ってことね


金はないが暇は腐るほどあった
というか
バイト代→3日で使い切る→バイト行けない→暇→でも腹は減る
ってな図式だ

住んでたところは千葉の辺境の地、当時は俺の田舎と大差ないくらい周りは田んぼか畑だった
暇だし、バイト行けないし、腹は減るしだけど、食材だけは周りに豊富に生えていたのだ
もっとも自然に生えた物じゃないと思うが
だってビニールハウスとかだし
農家の人だって生活かかってるかも知れないが
こっちは生死がかかっているのだ(セーシはあっちこっちに蒔いていたけどそれはまた別の話)
実際その年は体重が47キロくらいまで落ちちゃって、痩せこけた人間というよりは活きの良いミイラみたいだったし

そんなこんなで夜は採食活動のための時間となる
昼は電気とかガスの集金が来ちゃうから気配を消して部屋からは出ない
それに真っ昼間には危険が多くて採食活動にはむかないのだ

・キャベツ編
これはアパートの裏手に畑があった
割と簡単にいけるだろうと見切ったのだが 甘かった…
あれって引っこ抜こうとしても無理 だって根っこ1メールくらいあるし
両端をハシッっとつかんでぐりぐりしても抜けやしねぇー…
やっと抜けたと思ったら葉っぱだけ
しかも、そのまま勢い余ってそのまま後ろにゴロゴロ1回転 マンガみてぇーだ
それでも、なんとか泥だらけになりながらキャベツ1個ゲット
2食分くらいにはなったけど、労力のわりには報われない味

・二十日大根編
キャベツで懲りたんでもっと簡単に抜ける奴をターゲットにしたのだ
まぁ簡単には抜けるけど嵩の割には食える部分が少なすぎ
4,5本じゃ1食分にもならない
それに生で食ってもたして美味くないのだ
えっ 煮ればって? 
ガスなんてとっくに止められちゃってますし

・イチゴ編
これはかなりデンジャラス
だって、たぶんすぐ側が畑の持ち主の母屋
物音がするたびに塀にへばりついて息を殺して待機
もちろん頭の中ではルパン三世のテーマがリフレインしている
時期が早かったのと待機時間が長すぎたのとで5,6個しかゲットできなかった…
でも量は少ないがデザートとしては最高
残念なのは前菜どころかメインディッシュすら無いこと

・トマト編
これはハウスに侵入するまでと撤収するタイミングさえ神経を使えば後は比較的安全
暗がりから匍匐前進して素早く侵入
シャツをズボンの中に入れてベルトできつく縛る
あとは手当たり次第にトマトをもいではシャツの中に入れていくのだ
活きの良いミイラにエイリアンが卵生み付けたみたいな様相になってくる
撤収はもう運だけに頼るしかない
俺は見えない 俺は見えない と心でつぶやきながら運を天に任せてダッシュだ
量だけは3,4日トマトだけで生きていけるほど収穫したけど残念なことに明るいところでみたら全部青くて堅かった…(なんかそんな歌あったなぁ)
泣いたね この世に神はいないのかと
シャリシャリ食ったけどさ


ってなことをだ
ここんとこなかなか後2キロの減量がうまくいかなくてどーするかなぁー
なんて考えているときに思い出した